日比谷高校の教科別メソッド
集団討論について
【注意】
2024年度都立推薦入試(2024年1月に実施される入試)において、数年ぶりに集団討論が復活することになりました。
したがって、2023年現在中学3年生である皆さんは集団討論の対策を行う必要があります。注意してください。
集団討論の概要
- 5~6人で1つのグループとなる
- 与えられたテーマについて結論を導くために意見を出し合う
- 時間は30分程度
- テーマが発表されてから討論が始まるまでの短時間で自分の考えをまとめる必要がある
- 試験官は日比谷高校の先生2~3人
- 1人が進行を仕切り、他の試験官は採点に専念する
- 座席は試験官や他の受験生が見えるように半円形または円形に配置されている
- 座席にアルファベットの書かれた札が置かれている
- 集団討論中はそのアルファベットで呼ばれることになる 例:「Aさん」「Dさん」
- 日比谷高校推薦入試の集団討論は例年、試験官主導で行われる=司会進行は先生が行う
1:集団討論の流れ
集団討論は
討論テーマの発表⇒準備⇒意見の発表⇒討論⇒終了
という流れで行われます。
詳しく説明します。
①試験官から説明
受験生全員が指定された席に着席した後、面接官が集団討論の進行手順や注意事項を説明します。
②討論テーマの発表
日比谷高校の集団討論テーマは例年とてもシンプルなので、口頭でまたはプリントとして渡されると思われます。
③準備時間
この時間に自分の考えをまとめましょう。
④意見の発表
日比谷高校推薦入試の集団討論は司会進行を面接官(日比谷高校の先生)が務めるかたちで進行します。
そこで、まずは全員に一通り意見の発表を求めるようです。
- 面接官が順番に指名する場合
×:指名されるまで、自分の意見をどう話すか一生懸命考える
◯:誰かが自分の意見を話し始めたらそれを一生懸命聴く
⇒視点や考え方を自分の意見に活かす
例:「私の意見は□□です。はじめ、私の意見は〇〇でした。これは、Bさんの意見に・・・という点で似ています。そこから、Cさんの〇〇という視点を活かして□□という意見になりました。」
- 挙手制の場合
自分の意見に自信がある:真っ先に挙手して意見を述べる
自分の意見に自信がもてない:他の受験生の意見をしっかりと聴き、「誰の意見に賛成で、誰のどんな視点を活かしてどんな意見を持ったか」を後から話す
どちらのほうが自分にとってハードルが低いかは、あなたの性格やテーマとの相性次第です。
⑤討論
各受験生の意見を踏まえて討論を行います。
それぞれの意見に対するメリット・デメリットや改善案を発言することで異なる意見を1つにまとめていきます。
その際、誰かの意見や考え方、視点によって新しい意見が生まれるかもしれません。
タイミングや内容によっては非常に有効なものになります。
2:集団討論における評価の観点
日比谷高校は、集団討論の際に受験生をどういった観点で評価をしているのかを公表しています。集団討論+個人面接の評価の観点、という形式です。
こちらから確認できますので、必ず確認しておいてください。
ご覧になっていただけたでしょうか?
これから、評価の観点の各項目について解説をします。
①出願の動機・進路実現に向けた意欲
これは集団討論ではなく個人面接で評価される内容です。
集団討論対策の際は考えなくて大丈夫です。
②リーダーシップ・協調性
通常、都立高校推薦入試の集団討論では
- 議長を務めることでリーダーシップをアピールする
- 発言の少ない受験生に発言を促すことでリーダーシップをアピールする
といったことが非常に有効です。
しかし、日比谷高校推薦入試の集団討論では面接官の先生が司会進行を務めるためそういったアピールはできません。
では、どのようにしてリーダーシップや協調性をアピールすればよいのでしょうか。
- 積極的に発言して討論を「リード」する
- 他の受験生の発言をしっかり聴いている(発表者の目を見ながらうなずいたりメモをとったりしている)
- 他の受験生の発言を促すような視点・観点に基づいた発言をする
- 自分の考えたことをただ発表するのではなく、「誰のどの意見をどのように活かしての考え・発言なのか」を明確に伝える
- 自分の意見と他の受験生の意見を踏まえ、新たな意見を全体に提案して全体の意見を1つにまとめることに貢献する
- 他の受験生の意見にしっかりと耳を傾けたうえで、例えば「私は、Aさんの意見は確かに〇〇という点では良いと思います。しかし、□□という理由で△△という意見のほうがこのテーマの結論にふさわしいと考えています。いかがでしょうか。」といったかたちで議論を進める。
といった方法が考えられます。
③コミュニケーション能力
比谷高校推薦入試の集団討論で問われるコミュニケーション能力とは、
- テーマの意図(何を問うているテーマなのか)を正しく理解する能力
- 他の受験生の発言を、発言者が気持ちよく話せるような状況を実現するかたちで聴く力
- 他の受験生の発言の意図を正しく理解し、自分の意見の形成に活かす能力
- ハキハキと全員にはっきり聞こえる大きさの声で話す能力
- 伝えたいことを分かりやすく表現する能力
などを指しています。
④思考力・判断力・表現力
- 自分の意見を論理的に組み立てる思考力
- 他の受験生の意見のどういった点をどのように活かして自分の意見を補強するのか、あるいは変更するのかを判断する力
- PREP法(「結論⇒理由⇒例⇒結論」の順に話す技法)を駆使するなどして自分の意見を端的に分かりやすく伝えることができる力
- 事実と意見を区別して思考・判断・表現する力
を指していると考えられます。
3:何を目指すのか
集団討論では、「与えられたテーマについて話し合い、結論を出すこと」を目指します。
他の受験生を合格者の座を争うライバル・敵とは考えず、同じ目標を目指す仲間だと考えて臨むようにしてください。
「受験生ごとに自分の意見を譲らず、話が平行線をたどる」とならず、グループで1つの結論が出せるように
- 意見の共通点を見つける
- 何を重視して結論をだすか決めることを提案する
- 自分の意見に固執しない、という姿勢を他の受験生に示して討論をまとめる
- 全員の意見を尊重したうえでグループとしての意見を1つにまとめる方法(多数決など)を司会進行役の面接官に提案する
といったアクションをとりましょう。
4:具体的な対策
これまでの内容と繰り返しになる部分もありますが、具体的な対策を述べます。
①他人の話を「きちんと聴く」練習をする
他人の話を聴くときの目線、表情、相づち、姿勢といったものを練習します。
基準は、「相手が気持ちよくたくさん話したくなっているか」です。
そうなるまで練習を重ねましょう。
具体的には、
- 集中して聴く
- 相手の目を見る
- 穏やかな表情をする
- 姿勢を正して聴く
- うなずきながら聴く
などです。
②他人の話を要約する練習をする
現代文や小論文で必要となる練習を、「読む」ではなく「聴く」で行うということです。
他人の話を聴いて
- 要旨(主張したいこと)はなにか
- その根拠はなにか
- 何と何を比べてその意見に至ったのか
- 具体的にはどういうことなのか
といったことを考える練習をしましょう。
③他人の意見と自分の意見を統合し、発展させる練習をする
これは分かりづらいので、具体例で説明します。
夏休みの家族旅行の行き先を決める、という具体例です。
あなたは「沖縄に行きたい」と考えていて、あなたの妹は「北海道に行きたい」と考えているとします。2人の意見はバラバラですね。これを統合し、発展させます。
あなた:「ねえねえ、なんで北海道に行きたいの?」
妹:「だって、家族で旅行するときは美味しいものをたくさん食べたいんだもん。美味しい食べ物といえば北海道じゃない?」
あなた:「うんうん、なるほどね。例えば何が食べたいの?」
妹:「例えば?う~ん・・・別に何か食べたいものがあったわけじゃないなあ。」
あなた:「そうなんだ。何か思いつくものはある?」
妹:「そうねえ。美味しいお肉が食べたいかな。」
あなた:「なるほどねえ。食べ物の他にも北海道に行きたい理由はあるの?」
妹:「えっと、涼しいところがいいかなと思って。暑いのイヤじゃん?」
あなた:「確かにね。」
(ああ、なるほど。それで沖縄は暑そうって反対してたのか。)
あなた:「美味しいお肉が食べられて、涼しいところだったら賛成?」
妹:「うん、そうだね。」
あなた:「そっか…」
(私はキレイな海で泳ぎたくて沖縄に行きたいんだよね。どうしようかな…あ、そうか)
あなた:「そしたら軽井沢はどう?(スマホで検索した結果を見せながら)ほら、涼しいんだって。このお店のお肉も美味しそうじゃない?」
妹:「うん、そうだね。いいかも。でもお兄ちゃん(お姉ちゃん)は沖縄がいいんでしょ?」
あなた:「そう思ってたんだけど、海じゃなくてキレイなプールで泳げればいいかなって思ってきたの。そのほうが楽しいかもと思って。ねえねえ、このホテルのプールをみて。とてもキレイじゃない?」
妹:「うわ~。キレイだね。私もここで泳いでみたいかも。」
あなた:「そっかそっか。じゃあ、二人でお父さんとお母さんに軽井沢に行きたいって提案してみない?」
妹:「いいね!そうしよう。」
こういった感じです。
この例に沿ってポイントを紹介します。
- 相手の意見の理由を質問する
- 理由をさらに具体化して理解を深める
- 他にも理由がないか質問する
- 自分の意見の理由を改めて考える
- 相手の意見、自分の意見を同時に満たす他の選択肢を考える
- その選択肢が相手の要望を満たしていることを伝える
- 自分が考えたメリットについても相手に伝えて同意してもらう
- 意見をまとめる
といったポイントで展開されています。
1つの会話で上記すべてを実行するのは難しいかもしれませんが、意識してみてください。
④PREP法に沿って自分の意見を伝える練習をする
PREPとは、
P:Point (結論:主張、要点)
R:Reason(理由:結論に至った理由、そう主張する理由)
E:Example(具体例:理由に説得力を持たせるための事例・データ・状況)
P:Point(結論:主張、要点)
の頭文字をとったものです。
つまり、
まずはじめに結論を伝えてからその結論が正しいと考えられる理由を説明し、その理由に説得力を持たせる事例やデータを提示し、最後にもう一度結論を述べるという話し方のことです。
PREPに沿った論理展開の例を挙げます。
令和2年度入試の実際のテーマに沿った例です。
P:「集団の力を高めるためにはリーダーがメンバーのモチベーションを高めるためのコミュニケーションをとるべきである。」
R:「なぜなら、メンバーは自分に割り当てられたタスクのことしか見えておらず、集団のアクションの意義や目標を見失うことが多いからである。」
E:「例えばレストランという集団で皿を洗うというタスクを割り当てられているメンバーのことを考える。この人には目の前の皿しか見えていない。そこに、リーダーがコミュニケーションをとって日頃のねぎらいとともにお客様の感謝の声を伝えたらどうだろうか。その人には目の前の皿以外に、自分のレストランで食事をして喜んでいるお客様の姿が見えるようになる。そしてモチベーションが上がり、これまで以上に一生懸命お皿を洗うようになるだろう。」
P:「したがって、私は集団の力を高めるためにはリーダーがメンバーのモチベーションを高めるためのコミュニケーションをとるべきであると考える」。
これがPREP法の例です。
いかがでしょうか?
使う練習をしてみてくださいね。
⑤リーダーシップについて知っておく
これが対策として重要な理由や具体的な方法は次の「5:集団討論のテーマ」でお伝えします。
5:集団討論のテーマ
過去の日比谷高校推薦入試の集団討論テーマを6回分紹介します。
年度 | テーマ |
---|---|
令和2年度 | 「集団の力を高めるために求められることは何か」 |
平成31年度 | 「今後、日本人に求められているのは ~ 力だ。」 ~に言葉を入れ、なぜそう考えるのか説明しなさい。 ただし、「 ~ 力」のところは、「 ~の力」又は「 ~する力」としてもよい。 |
平成30年度 | 自動化されると良いと思うものは |
平成29年度 | 「日比谷高校のスローガンを考えてください」 |
平成28年度 | 「中学校で新しい教科を一つつくるとしたら」 |
平成27年度 | 「私たちは何のために学ぶのか」 |
私がこれらのテーマから考えることは以下の2つです。
①テーマがシンプルである
⇒自由な発想で自分の意見を考えることができる
⇒発想力が求められる
⇒他の受験生の発想を否定せず認めることや自分の意見の形成に活かすことが求められる
②リーダーシップについての知識や自分なりの理解をしておくと良い
さらに言うと、「リーダーとしてメンバーのモチベーションを向上させるコミュニケーションをとるスキル」についての理解をしておくと良いと考えています。
これは「え、なんで?」となるかもしれません。
理由をあげます。
- 日比谷高校の生徒は、卒業後各分野のエキスパートとしてリーダーシップを発揮することを求められていると考えられる
- テーマとリーダーシップとの関連性が深い
これがどういうことか、各テーマと照らし合わせる形で紹介します。
テーマ | 説明 |
---|---|
「集団の力を高めるために求められることは何か」 | 集団にはリーダーがいる。 集団全体の力を高めるのはリーダーの重要な役割である。 |
「今後、日本人に求められているのは ~ 力だ。」 ~に言葉を入れ、なぜそう考えるのか説明しなさい。 ただし、「 ~ 力」のところは、「 ~の力」又は「 ~する力」としてもよい。 | 「日本人に」という括りが与えられたということは、 海外との競争を念頭においたときの「日本全体」「日本企業」「日本の組織」が意識されている。 したがって、組織におけるリーダーの役割を念頭において話を進めることができる。 |
自動化されると良いと思うものは | 自動化されると良いものを考えるには、自動化できないものを考えると良い。 自動化出来ないものは人と人とのコミュニケーションである。これは組織でも同様だ。 リーダーシップを発揮するために自動化できるものを考える、という流れにもっていける。 |
「日比谷高校のスローガンを考えてください」 | 日比谷高校、という組織をリーダーとしてどう引っ張っていくのかという観点で考えることができる。 また、全員が卒業後それぞれの分野でリーダーシップを発揮しよう、という流れで進められる。 |
「中学校で新しい教科を一つつくるとしたら」 | 「リーダーシップ」という科目をつくろう、という流れで進められる。 |
「私たちは何のために学ぶのか」 | 学びを深めることで自分が専門とする分野のリーダーとなることができ、 社会への貢献が実現できるという流れで進められる。 |
という具合です。
他の観点で自分の意見が形成できるときはそれで良いのですが、困ったときは「リーダーシップ」「リーダとして行う、メンバーのモチベーションを高めるコミュニケーション」という観点で与えられたテーマについて考えてみると突破口が開けるかもしれません。
このページの最後に、リーダーシップについて紹介しておきます。
題して「リーダーの心得16選」です。
リーダーの心得16選
①組織のリーダーの最初の仕事は、組織としての使命やそれを実現するための思考・行動を明確にすることである。
②次の仕事は、それをメンバーに何度も伝えることでメンバーが常にそれを念頭において自分の役割を果たす行動をとれるようにすることである。
③メンバーそれぞれの長所が発揮できるような役割を与える
④メンバーが力を発揮できる環境を整えてあげる
⑤メンバーに意見を求め、それを尊重することで自主性やモチベーションを維持・向上させる
⑥メンバーとの定期的なコミュニケーションの機会を確保する
⑦必要に応じてメンバーの行動を促す
⑧メンバーの表情や態度をしっかりと観察し、不安や不満を察知する
⑨メンバーを孤立させない
⑩メンバーの失敗の後始末をする(責任をとる)
⑪組織の団結力を高めるため、メンバーどうしのコミュニケーションや信頼関係の形成を促す
⑫必要に応じてメンバーに適切なアドバイスができる
⑬必要に応じてメンバーに助力を求めることができる
⑭常に前向きで上機嫌であり、メンバーが相談や提案をしやすい雰囲気をつくっている
⑮メンバーから嫌われることを恐れず、必要に応じて指摘や叱責ができる
⑯各メンバーの進捗状況を把握している(自動化するならここかな、と考えています。)
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