日比谷高校の教科別メソッド

理科共通問題について

概要

  • 50分間、100点満点の試験です
  • 1問4点の25問構成です
  • 自校作成問題ではなく、他校と同じ入試問題です
  • 出題分野は地学・生物・化学・物理の4つ
  • 25(問)÷4(分野)=6…1であるため、どれか1つの分野から7問、他の3つの分野からは6問出題される
  • 実験やレポートを題材にした問題が多く出題されます
  • 知識問題、読み取り問題、考察問題、計算問題が出題されます

1:大問別の問題構成

都立高校入試の理科は、大問1~大問6の構成になっています。
そして、各大問の出題分野は平成15年以降19年間ずっと一定しています。

各大問の特徴を紹介します。
大問3~6については、この構成になって以来19年間の出題履歴を載せてあります。

大問1

  • 基本問題の小問集合です。
  • 全部で6~7問出題されます。7(問)÷4(分野)=1…3なので、3つの分野は2問、1つの分野は1問出題されます。
  • 基本的な知識問題または計算問題の出題が大半です。
  • すべて4択問題です。

大問2

  • こちらも大問1と同様、基本問題の小問集合です。
  • 各分野1問ずつ、全部で4問が出題されます。
  • レポートが与えられ、そのレポートにちなんだ問題が出題されます。
  • ですので、ときおり知識に加えてレポート内容を読み取ることを必要とする問題が出題されます。
  • すべて4択問題です。

大問3

例年、地学の問題が3~4題、出題されます。
2003年度から2021年度までの出題テーマはこのようになっています。

受験年度題材
2021年度天気の変化と気象観測
2020年度太陽の1日の動きを調べる実験
2019年度地震の観測と地震の起こる仕組み
2018年度地層の観察
2017年度天気の変化と気象観測
2016年度地球から観察した天体
2015年度地層の観察
2014年度太陽と月の1日の動きを調べる観察
2013年度気象観測と天気の変化
2012年度天体の動きや様子を調べる観測
2011年度地震について
2010年度天気とその変化
2009年度太陽の1日の動きと季節による星座の見え方
2008年度地層のつくりとでき方
2007年度気象観測、天気とその変化
2006年度日本列島付近の地震と火山
2005年度金星の位置
2004年度地層についての観察
2003年度雲を発生させる実験

ランキングは
1位天体 6回
2位天気 5回
3位地震 4回
4位地層 3回
5位火山・雲 1回

となっています。

基本的には中1地学(地震・地層)・中2地学(天気)・中3地学(天体)がローテーションで出題されます。
また、「地層」「地震」は必ず交互に出題されています。

したがって、2022年度入試は地層に要注意です。
地層の年は複雑な読み取り問題も出題されることが多く、知識だけでは太刀打ちできない可能性が高いです。 知識だけでなく理解も重視して地層問題の対策を行っておいてください。

大問4

例年、生物の問題が3~4題、出題されます。
2003年度から2021年度までの出題テーマはこのようになっています。

受験年度題材
2021年度ツユクサを用いた観察と実験
2020年度消化酵素の働きを調べる実験
2019年度植物のつくりの観察と遺伝の規則性を調べる実験
2018年度ツユクサを用いた植物の体のつくりと働きを調べる実験
2017年度ヒトの生命を維持する仕組み(消化)
2016年度植物の体のつくりの観察と遺伝の規則性を調べる実験
2015年度オオカナダモを用いた実験(光合成、呼吸)
2014年度花のつくりを調べる観察と遺伝のしくみを調べる実験
2013年度消化酵素の性質を調べる実験
2012年度オオカナダモを用いた実験(光合成、呼吸)
2011年度タマネギの根の観察(細胞分裂)
2010年度メダカを用いた実験(刺激と反応)
2009年度生物どうしのつながりと分解者のはたらき
2008年度カイワレダイコンを用いた植物の実験(光合成、呼吸)
2007年度動物の発生と動物のからだのつくりとはたらき
2006年度植物のからだのつくりとはたらきを調べる実験
2005年度ヒトの食物の消化について調べる実験
2004年度ホウセンカの花粉を用いた実験(有性生殖)
2003年度ソラマメの観察(体細胞分裂、有性生殖)

ランキングは
植物   12回(遺伝3回等を含む)
消化    4回
刺激と反応  1回
分解者   1回
発生    1回

となっています。
植物の出題が圧倒的に多いです。

また、細かく見てみると大問4では実験・観察の際の手順に関する知識や結果を考察する力を問う問題がほぼ毎年出題されるという特徴があります。
過去6年のうち5年はそういった問題が出題されています。

したがって、植物を題材にした問題として少なくとも
・植物のつくり
・植物の分類
・光合成
・呼吸
・優性生殖(主に減数分裂)
・遺伝
・植物を用いた観察・実験の手順
・考察問題

といった8つのテーマに関する出題が可能です。

1回の受験問題で3~4問しか出題できない関係上、上記8テーマをすべて出題することはできません。
すべてを出題するのには2年かかります。

したがって、2年連続で植物を題材にした問題が出題されることは珍しくありません。
(ちなみに過去19年のうち、3年連続植物が出題されたのは2014~2016の1回のみです。)

これらをふまえると、2022年度入試は「植物のつくりの観察と遺伝の規則性を調べる実験」に要注意です。
遺伝に関する問題は手順さえ身につければ複雑ではないことが多いです。

大問5

例年、化学の問題が3~4題、出題されます。
2003年度から2021年度までの出題テーマはこのようになっています。

受験年度題材
2021年度炭酸水素ナトリウムの分解
(炭酸水素ナトリウム、うすい塩酸)
2020年度物質の性質を調べて区別する実験
(塩化ナトリウム、ショ糖、炭酸水素ナトリウム、ミョウバン)
2019年度銅の酸化、酸化銅の還元
2018年度水溶液と金属を用いた実験
(電池、薄い塩酸、亜鉛板、銅板、水酸化ナトリウム水溶液)
2017年度物質の性質を調べて区別する実験
(塩化ナトリウム、ショ糖、炭酸水素ナトリウム、酸化銀、酸化銅)
2016年度電気分解の実験と水溶液の性質を調べる実験
(水酸化ナトリウム水溶液、薄い塩酸)
2015年度マグネシウムの酸化実験(マグネシウム、うすい塩酸)
2014年度酸性の水溶液と金属を用いた実験
(気体の発生、電池、マグネシウム、亜鉛、薄い塩酸)
2013年度酸性とアルカリ性の水溶液の性質を調べる実験
(塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)
2012年度化学変化と反応する物質の質量を調べる実験
(気体の発生・石灰石と薄い塩酸、酸化銅の分解)
2011年度気体の性質を調べる実験
(塩化アンモニウム、水酸化カルシウム、うすい塩酸、亜鉛、アンモニア、水、中和)
2010年度銅の粉末を加熱する実験
2009年度酸化銅、炭酸水素ナトリウム、酸化銀の特徴を確認する実験
2008年度化学変化とエネルギー
(電気分解、電池、水酸化ナトリウム水溶液、薄い塩酸、亜鉛版、銅板)
2007年度炭酸水素ナトリウムの分解の実験
(小問でうすい塩酸、石灰石、酸化銀)
2006年度うすい塩酸と石灰石を用いた実験
(うすい塩酸、石灰石、酸化銀、銅)
2005年度銅の酸化、酸化銅の還元の実験
2004年度炭酸水素ナトリウムの分解
2003年度うすい塩酸と石灰石を用いた実験

化学は学年ごとの範囲を超えた問題が出題しやすいという特徴があります。
中1~中3を通じて、登場する気体・金属・水溶液のラインナップが共通しているからです。

そこで、ランキングはテーマごとではなく登場した物質ごとにつくりました。

物質回数主な出題内容
うすい塩酸12回電池、中和、気体の発生と様々な分野に登場します。
炭酸水素ナトリウム6回分解が出題されます。
6回電池、酸化での出題です。
酸化銅5回分解での出題です。
亜鉛4回基本的に電池の「亜鉛板」としての出題ですが、
酸性・アルカリ性の水溶液をかけると水素を発生するという性質もあります。
水酸化ナトリウム水溶液4回電池、中和での出題です。
石灰石4回うすい塩酸をかけると二酸化炭素が発生します。
酸化銀4回分解の出題です。
マグネシウム2回酸化と酸性の水溶液をかけると水素が発生するという性質の出題です。
塩化ナトリウム・ショ糖2回砂糖は有機物、塩化ナトリウムは無機物という区別が出題されます。
塩化アンモニウム
水酸化カルシウム
アンモニア
1回アンモニアの発生、アンモニウムイオンが出題されました。
ミョウバン1回再結晶の計算が出題されました。

出題されやすいテーマが絞れる表になっていますね。
2022年度入試の注目テーマを考えます。

  • 薄い塩酸は19年中12回のペースで登場している(3年に2回ペースくらい)
  • うすい塩酸は2021年度入試では登場し、2020年度は登場していない
  • ということで2022年度はうすい塩酸が登場すると予想
  • 近年、「電池が4年に1回出題」の周期が2サイクル続いている
  • 過去3年電池の出題はない

以上の根拠から、    
2022年度入試の注目テーマは「うすい塩酸と金属を用いた電池の実験」とします。

なお、大問5はやや過程が複雑な計算問題が多いことが特徴です。
電池関連を中心に、化学の計算問題はしっかり練習しておきましょう。

大問6

例年、物理の問題が3~4題、出題されます。
2003年度から2021年度までの出題テーマはこのようになっています。

受験年度題材
2021年度電流と磁界に関する実験
2020年度電熱線に流れる電流とエネルギーの移り変わり
2019年度小球の運動とエネルギーを調べる実験
2018年度電流と磁界の関係を調べる実験
2017年度質量が異なる物体の運動とエネルギーを調べる実験
2016年度電気器具の消費電力やエネルギーの移り変わりを調べる実験
2015年度滑車を用いて仕事とエネルギーの関係と物体の運動を調べる実験
2014年度電流と磁界との関係を調べる実験
2013年度物体にはたらく力と物体の運動との関係を調べる実験
2012年度物体の運動を調べる実験
2011年度電流の実験
2010年度斜面と水平面における物体の運動の実験
2009年度電流の実験
2008年度物体の運動を調べる実験
2007年度電流の実験
2006年度物体の運動を調べる実験
2005年度電流と磁界について調べる実験
2004年度斜面と金属球を用いた実験
2003年度電流の実験

大問6は出題内容がある程度は予測しやすいです。
基本的に、「電流(と磁界)」「物体の運動とエネルギー」を交互に出題します。
例外は「2012年度⇒2013年度」と「2020年度⇒2021年度」のみです。
ということで、2022年度入試は「物体の運動とエネルギー」に注目です。

2:分野別の出題内容と対策

ここまでで大問別に出題内容を確認しました。
ここでは、分野別に年ごとの出題項目をみていきます。

①地学

項目/受験年度202120202019201820172016
火山
火成岩
地震(知識)
地震(計算)
地層(知識)
地層(観察)
堆積岩、堆積岩と化石
大地の変動
天気の観測
空気中の水蒸気
霧・雲の発生
気圧と風
前線の通過と天気の変化
大気の動きと偏西風
日本の四季と天気
天体の日周運動
地球の自転
地軸の傾きと季節の変化
天体の年周運動
太陽系と宇宙(知識)
金星
自然と人間
各種実験・観察の手順

このようになっています。

ポイントは
・満遍なく出題されている
・項目ごとに知識・計算・考察問題を確認しておく
・金星と月、陸風・海風が大問1・2でそろそろ出るかも

といったところですね。

②生物

項目/受験年度202120202019201820172016
花のつくり
植物の分類
動物の分類
細胞のつくりとはたらき
植物のからだのつくりとはたらき
消化と吸収
呼吸
血液
排出
刺激と反応
運動する仕組み
体細胞分裂
無性生殖
有性生殖
(減数分裂を含む)
遺伝の規則性
進化
生物どうしのつながり
物質の循環
各種実験・観察の手順

このようになっています。

ポイントは
・地学に比べると出る分野・出ない分野の違いがはっきりしている
・時間が限られている場合、頻出分野から対策する
・実験・観察の手順に要注意

といったところですね。

③化学

項目/受験年度202120202019201820172016
いろいろな物質
(有機物・無機物など)
物質の密度
気体の性質
水溶液
濃度や再結晶量の計算
物質の状態変化
原子・分子
物質の分解
物質の化合
酸化と還元
化学変化と熱
化学変化と質量
(計算問題を含む)
電気分解とイオン
化学電池のしくみ
酸とアルカリ
中和
環境保全と科学技術
各種実験・観察の手順

このようになっています。

ポイントは
・満遍なく出題されている
・実験の手順についても要注意である
・原子、原子核、陽子、電子、中性子について正確に理解しておく
・やっぱり電池はそろそろ怪しい
・中和もそろそろ怪しい

といったところですね。

④物理

項目/受験年度202120202019201820172016
レンズ
力の大きさと表し方
圧力
大気圧
電流・電圧と回路
電流・電圧と抵抗
オームの法則
電力
電力量・熱量
静電気・電気が流れる仕組み
電流と磁界
直流と交流
力のつり合い
力の合成と分解
作用と反作用
水中の物体にはたらく力
物体の運動の速さ・記録
力がはたらく運動
力がはたらかない運動
仕事
仕事率
力学的エネルギー
科学技術と人間
各種実験・観察の手順

ポイントは
・出る分野と出ない分野が分かれています
・新課程で、扱う学年が変更となった水圧はそろそろくるかも
・仕事・仕事率はそろそろ要注意
・レンズもそろそろかな

といったところですね。

3:日比谷高校受験生の平均点から考える勉強方針

日比谷高校入試において、理科は自校作成問題ではなく他の都立高校と同じ問題が出題されます。
そこで、自校作成問題である国語・数学・英語に比べて平均点が高いです。
年にもよりますが、平均点は85点前後になります。

つまり、90点をとることができれば手強いライバルばかりの日比谷高校入試といえども有利な状況を実現できるということです。
他に平均点を大きく上回る見込みの科目がない場合は、理科で90点を目指しましょう。

そのためには、このページで紹介した分類をみて、「この項目からはこういう問題が出るな」
ということが頭の中で思い描けるようにしてください。

例えば、「生物の『進化』といえば始祖鳥、カモノハシ、相同器官がよく出るんだったな」といった具合です。
こうしたことが全分野の全テーマについて頭に入っていれば、90点以上をとることは難しくないです。

また、大問3~大問6はすべて実験・観察を題材にして問題が出されます。
そこで、中学で行うとされているすべての実験・観察について手順や考察ポイントを理解・暗記しておくことは非常に重要となります。

また、すべての分野において中1・中2範囲からの出題も非常に多いです。
中1生・中2生もこれまでの理科の内容を、実験・観察問題を中心にしっかりと行うことで日比谷高校受験対策をスタートすることができます。
できるだけ早い段階から都立高校入試形式の問題をたくさん解いて実際の出題形式や傾向になれておきましょう。

対策のポイント
・項目ごとの出題内容・設問を思い浮かべられるようにする
・実験・観察の手順、結果を重点的に学ぶ
・中1・中2から対策ができる
・都立高校入試形式の演習をたくさんやる

といったところですね。

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