こんにちは!日比谷高校受験対策専門塾・星進会の諏訪孝明です。
この記事では、2022年2月に行われた都立日比谷高校の入学試験における自校作成問題の国語・物語文の問題を解説します。
日比谷高校受験生のうち、
・国語の成績を上げたいけど、何をどう勉強したらいいかわからない
・国語の自校作成問題で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
それでは早速、まいりましょう。
本文解説
もどかしい
思った通りにならずイライラしている心情のことです。
細かいニュアンスはさておき、「マイナス」の感情だということが分かればOKです。
心情語があったら、
・誰が
・何に対して(≒なぜ)
抱いている心情なのかを確認します。
今回は、
・鐘ヶ江の会社の車内の人間が
・鐘ヶ江が映画の有料配信を許可せず、映画館での上映にこだわっていることに対して
抱いているマイナスの感情である、ということを読み取りましょう。
頭ではわかっている⇔心が反応しない・心が動いてくれない
理解はしているが、気持ちは動いていない・心の底から納得はしていないといった意味です。
今回は登場しませんが、
「頭ではわかっている⇔身体がついてこない」
「頭ではわかっている⇔行動には移せていない(実行できていない)」
といった対比もあり得ます。
~してくれない
「本当は~してほしい(~したい)のに、~できていない」という意味です。
寂しい
そのまま心情を表しています。
鐘ヶ江の、映画館が潰れていくことに対するマイナスの心情です。
そのまんまですね。
そのまんまなので、有効な解答根拠にはならないです。
逆に、問1のミスリードに使われています。
ただずっと、そう思っている
・「そう」=指示語⇒具体化する。
ここでは、「そう」=映画館が潰れて寂しい
・「ただずっと」=一時的な感情ではない⇒その気持ちが強いものであることを示している。
清々しい表情
プラスの意味をもつ表現です。
直前まで「寂しい」と言っていたのに突然プラスの感情を抱いていることに違和感を覚えると思います。
その違和感を解消するヒントは、「清々しい」の意味にあります。
清々しいには主に3つの意味があります。
①さわやかで気持ちがいい
②ためらいがなく思いきった様子
③物事が順調に進んでいる
です。
このなかで、今回は②の意味を使います。
つまり、「制作は心の問題である」という意見に自信がある様子を描いているということです。
これは問6でイを選ばない根拠となっています。
問題
文章中にこの言葉が出てきたら要注意です。
これは大問3に限った話ではなく、大問4・5でも同様です。
なぜならば、以下のような様々な意味のある言葉だからです。
・問い/解くべき問題 例:「入試の問題」
・テーマ 例:「環境問題」
・トラブル 例:「ご近所問題」
特に要注意なのは、「テーマ」の意味で使われている場合です。
そして、今回がこれに該当します。
この物語文のテーマ(主題)が「心」であることが判明しました。
純度の高い密室空間
これ単独では意味も不明瞭ですし、重要な表現であると判断する要素もありません。
ただし、先まで読み進めて傍線部(3)つまり問3まで進むと空間に関する描写に関わる問題が待っています。
そのときに、この「純度の高い密室空間」という表現まで戻れるかどうかが問3のキーポイントになります。
(ただし問3に関してはもっと分かりやすいヒントが別で用意されているので必ずしもこの表現と問3との関連性に気づかなくても正解はできます。)
表情が強張る
鐘ヶ江の表情の変化を描写しています。
これまで清々しい(=プラスの)表情をしていた鐘ヶ江が、強張った(=マイナスの)表情に変化しています。
この表情変化の原因は、
話題が「作品の作り手側への影響」に変化したことです。
映画の配給、配信と享受方法の多様化が映画の作り手に対して与えている影響を深刻に受け止めていることが伝わってきます。
この読み取りには〔前文〕に書かれている情報が駆使されています。
・映画の配給、配信と享受方法が多様化している
・鐘ヶ江は映画監督である(=映画を制作する人=作り手側の人間である)
といった情報を駆使してこの表情変化の理由やその背景を特定していきます。
身をもって実感した
・尚吾が
・映画制作の速度は上げたくても上げられるものではないことを、実際に映画制作に携わることで
実感した、ということです。
具体的にどのような体験で実感したのかは描写されていないので分かりません。
心から頷く
・「頷く」:相手に賛成・同意する気持ちを表現しています。
・「心から」:強い気持ちであることを示す強調語です。
身をもって実感したことなので、強く賛成できるということですね。
吞み込まれていく・吞み込まれることになる
影響を受けたくないと思っている相手からの影響で、好ましくない変化がおきるときに使う表現です。
ここでは、
・映画の配給、配信と享受方法の多様化による映画制作速度の変化から、
・映画の作り手側が
・映画の作り方が変わってしまう
という影響を受けています。
この影響が良くないものであることは、続く描写である
「鐘ヶ江の瞳に翳が差す」
から読み取ることができますね。
AだけじゃなくてBにも…
「AではなくB」
「AだけでなくB」
といった表現ではAよりもBのほうが重要となります。
また、AとBが対比関係にあることも重要です。
ここでは、
「作品を受け取る側」⇔「作品を作りだす側」という対比関係
と
作品を作りだす側に焦点を当てている(作品を作り出す側に注目している)
ことが読み取れます。
そして、「AだけでなくBも」という表現の後にはAとBの共通点が述べられます。
ここでの共通点とは、
「心がある」
です。
「心」はこの文章のテーマ、主題でしたね。
声は、触れればボロボロと崩れてしまいそう
これは比喩表現ですね。
比喩表現で説明されている箇所は重要な箇所です。
なぜならば、比喩には「イメージをわかりやすく説明する」「イメージを強調する」といったはたらきがあるからです。
わかりやすい説明や強調をして読者に伝えたい内容=重要な内容
ということですね。
では、どうやってここが「比喩表現」であることに気づくのでしょうか。
それは、
「声には触れることができない」
という点です。
本来触ることのできないはずの声に対して「触れれば」と表現しているので、
「あ、ここは比喩表現が用いられているな!」
と気づくことができるわけです。
容赦なく
ここでは、映画の作り手側が望んでいても望んでいなくても(作り手の心に関係なく)映画制作の環境がどんどん変わっていくということを表しています。
そして、それが好ましくない(=マイナスの)変化であることも示しています。
AよりB
AとBの対比関係を示します。
ここでは、
「内容」⇔「制作過程の新しさ」
「完成度」⇔「社会を反映しているかどうか」
という対比です。
直後で鐘ヶ江が「変わらないように努力する」と発言しているので、鐘ヶ江が追及しているのは新しさではないことが分かります。
よって、
「鐘ヶ江は映画の内容や完成度を追求したいと考えているけれど、世間は制作過程の新しさや社会を反映しているかどうかを評価するのでそのギャップに苦しんでいる」ことがわかりますね。
「変わらないように努力する」⇔「容赦なく変わっていく」
「何もかもが変わっていく世の中において、変わらないものがある。それはとても重要なものなのだ。」
というテーマ(主題)の物語文は多いです。
例えば親子愛、向上心、誠実であることなどが「時代を超えて存在し続ける重要な価値観」とされます。
ここでは、
変わらないもの:自分の心。自分の感性。
変わっていくもの:作品を取り巻く環境。映画の良し悪しを決める物差し。
となっています。
「心」が変わらないものとしてこの物語文のテーマ(主題)となっていることが分かりますね。
~しかない
限定表現は強調表現です。
心・感性が重要なものであることを強調しています。
ただ~するだけ
マイナスの評価を下す表現です。
「世間に合わせる」ことに対して鐘ヶ江がマイナスの感情をもっていることがわかります。
世間の風潮が変わり続ける
世間の風潮は「変わっていくもの」に分類されています。
このことからも、「世間に合わせる」ことに鐘ヶ江がマイナスのイメージを持っていることがわかりますね。
顔の温度が上がった(=尚吾の赤面)⇒図星だった
尚吾の「顔の温度が上がった」がどのような心情表現なのかを読み取る必要があります。
しかしこの「顔が赤くなる」と同じようなニュアンスの表現には「緊張」「照れ」「動揺」など多様な意味があるので意味を特定するのが難しいです。
こういった場合には勝手に推測するのはNGです。
ではどうすればいいかというと、本文に書いてあることを基に考えるようにしてください。
特に、近くの表現を参考にしましょう。
ここでは、「図星だった」とありますね。
「図星」とは、自分が思っていることをそのまま指摘されたときに生じる驚きや困惑のことを指します。
待つことが下手になっている=待てなくなっている=待てないものが増えていく=待てなくなる
同じような表現が繰り返されているときは、必ず注目するようにしてください。
色々な人が色々なものを待てなくなっていると理解して読み進めればOKです。
唾を飲み込む
「緊張」を描写する際の表現です。
~べきだ/~べきではない/~くらいがちょうどいい/~じゃない/~してはいけない
1つの「 」の中にこれらの表現がすべて使われています。
これらはすべて、話し手の意見を表しています。
その内容をまとめておくと、
・作り手は表現を磨くべき。自分の意図を説明できるくらい考えつくすべき。自分の感性を把握すべき。
・作り手は見栄えを気にして品行方正なものをつくるべきではない。
ここで、「感性」ということばが再度登場しました。
感性=心は、「変わらないもの」(=普遍的であり、大切なもの)という扱いでしたね。
本来は~なはず
「本来はおかしいはずなんだ」という表現があります。
これは、「本来はおかしいはずなのに、現実としてそうなってしまっている(作品を提供する速度が上がるとともに自分を把握する時間が少なくなっている)」ということを指しています。
~は譲れない
強い主張・意思を感じさせる表現です。
ここでは、鐘ヶ江さんの「自分の感性を把握する時間を確保すべきだ」という主張の強さを表しています。
声の調子を軽い雰囲気に戻した
変化を表しています。
それまで:重い雰囲気だった
そこから:軽い雰囲気になった(戻った)
ということですね。
ここまでが重い雰囲気だったことが改めて分かる描写です。
脚を組む
様々な心理を表現することができる描写です。
候補をざっと上げると、
・リラックスしている
・頭を回転させている
・相手の意思を拒んでいる
といったものがあります。
ここでは、直前に「軽い雰囲気に戻した」とあるのでその意味で理解しておけば良いです。
この物語文では「脚を組む=軽い雰囲気になった合図」と理解しておくということです。
話にならない
とても低い評価であることを表しています。
ここでは、鐘ヶ江の「映画館以外で上映したくない」という考えが今の世の中では評価が低いということです。
変わった/変化はもっと目まぐるしいだろう
「変化する」「変化しない」は、この物語文のテーマでしたね。
(「あれ、そうだっけ?」となった人は本文とこの解説文を何度か読み直しましょう。)
時計の針の音もない静寂
問3を解くとき、傍線部(3)に注目していますね。
傍線部(3)の「針の音がするような時計は置かれていない」の意味は、この箇所で判明します。
「静寂」
これが問3のキーワードです。
一番変わりやすい
「一番〇〇」
「もっとも〇〇」
といった「最上級」表現は読解のなかでとても重要です。
「〇〇」であることを強調して読者に伝えている表現だからです。
ここでは、これまでの内容と合わせて、
変わらないもの:自分の心。感性。=とても大事なもの
一番変わりやすいもの:質や価値を測る物差し(=映画の良し悪しを決める物差し。)
と整理することができます。
「物差し」ということばが二度目の登場であることに気付けると読みやすくなりますね。
気付けるように訓練していきましょう。
AのおかげでB
・因果関係を表す
・Bには好ましい内容が入る(Bが好ましくない内容の場合、それは「皮肉」と呼ばれる表現となる)
祖父の影響で尚吾が映画制作に今携わっているということですね。
組んでいた脚をほどいた/唾を飲み込む
再び会話が重い雰囲気=緊張状態に突入したことを示す描写です。
また、脚を組んだ
これも会話の雰囲気の変化を表しています。
軽い雰囲気になった(戻った)ということです。
絶対に変わらない
この物語文のキーワードですね。
絶対に変わらない=とっても大事なもの:尚吾がおじいさんと映画館で映画を観た時間
自分の感性を積み上げた
感性(=心)は「変わらない」ものであり、重要なものとされていますね。
その重要なものが、映画を観ることによって育まれてきたことに触れています。
紛れもなく〇〇だ
「〇〇」を強調する表現です。
「絶対に変わらない本当のこと」「紛れもなく本当のこと」の2つの表現で尚吾とおじいさんとの映画館での時間の重要性が
A。だからB。
Aが原因、Bが結果の因果関係を表しています。
ここでは、
・原因:たくさんの映画を観て過ごした時間は本当。(変わらずに存在する)
・結果:とにかく沢山の映画を撮るべき
となっています。
嫌になる/うんざりする/話にならない
すべて、鐘ヶ江が自分の「映画館でしか映画を上映しない」というスタンスに対して下している評価です。
そのスタンスではいけないと頭ではわかっているんですね。
でも「心」では納得していない。
この物語文では、「心」こそが何より大事とされていますから、「心」で納得していないことを実行はしないのです。
AではなくB
先ほども触れたように、「AではなくB」はBが重要です。
ここでは、
「自分の時間とそこで積み上げた感性を信じなさい。」という鐘ヶ江から尚吾へのメッセージですね。
また「感性」という言葉が登場しました。
逆に
対比構造の存在を示しています。
ここでは、
「こだわる」⇔「捨てる」
の対比ですね。
AでなくB
またまた登場です。
「私の言葉ではなく時間を信じなさい。」というメッセージです。
先ほどと同じ内容ですね。
嗤う
「他人を馬鹿にする」という意味です。
ここでは、鐘ヶ江の「映画館での上映のみにこだわり続ける自分への低い評価」が表れていますね。
~かもしれない
~かもしれないし、そうでないかもしれない。
このフレーズが、傍線部(5)前後数行で3回も使われています。
50%ー50%であり、確証がもてない。
こういった意味ですね。
この理解の有無が問5の正誤を分けます。
掌で確かめるように
「ように」があるので、比喩表現ですね。
では、どのようなことを伝える比喩表現なのでしょうか。
自分が「雨」や「傘」といった表現から抱くイメージで勝手に解釈しないようにしてください。
比喩表現の例:「彼はアリのような人だ。」
さて、どのような意味で使われているでしょうか?
小さい?働き者?黒い?
分かりませんね。
このように、比喩表現が表している内容が持つ意味は前後関係から読み取っていかないと判断ができないのです。
それを覚えておいてください。
本文解説は以上です。
細かく読み解いていきました。
何度も読み直して精読の訓練をする題材にしてください。
設問解説
問1
比喩表現が意味する内容を問う問題です。
まず、傍線部(1)が比喩表現であることを見抜く必要があります。
「触れることのできないはずの声に触れるという話をしている」ということから気が付くようにしましょう。
鐘ヶ江がどのような心情なのかを問うている問題ですので、
心情分析の要素
・誰の心情なのか
・どんな心情なのか
・何に対しての心情なのか
について以下のようになります。
・誰の:鐘ヶ江の
・どんな心情:これが問われている
・何に対しての:作品の作り手側が速度を上げる波に吞まれていることへの
この、「何に対しての」の箇所が問1のキーポイントです。
では、選択肢をみていきましょう。
ア
「映画が単に娯楽のためのメディアの一つであると考え始めていることへの」
「いらだち」
⇒「何に対しての」の部分が異なっていますね。
イ
「自らの実績や評価が崩れ落ちていくことへの」
「寂しさ」
⇒こちらも、「何に対しての」の部分が違いますね。
なお、「寂しさ」というフレーズは登場していますが、「映画館が潰れるのが寂しい」なのでこれも対象が異なっています。
ただ「寂しい」というフレーズが本文中にあったからといってイに飛びつくことがないようにしましょう。
ウ
「映画作りの大切な部分が失われていくことへの」
「強い不安」
⇒「映画作り」に言及があるので、「何に対しての」の箇所においてこの選択肢が最も適切であると判断できます。
⇒〇
エ
「多くの映画館の経営が困難になっていることへの」
「強い憤り」
⇒これも「何に対しての」の部分が違いますね。
問2
問1は鐘ヶ江の心情を説明する問題でした。
問2は尚吾の心情を説明する問題となっています。
問1と同様に心情を分析しましょう。
その際、傍線部(2)直後の表現「図星だった」に注目しましょう。
「図星」とは、自分が思っていることをそのまま指摘されたときに生じる驚きや困惑のことを指します。
心情分析
・誰の:尚吾の
・どんな心情:これが問われている
・何に対しての:鐘ヶ江に自分が思っていること・自分の現状(世間の風向きに合わせて映画の作風が変わってしまうこと/自分の譲れないものをまだ見極められていないこと)をそのまま指摘されたことに対しての
問2も、問1と同様に「何に対しての」の部分がキーポイントとなります。
ア
「速度を上げることで映画の質を下げてしまった自分に対する」
「情けなさ」
⇒「世間に合わせる」とは書いてありますが、「質が下がった」とは書いてありませんね。
「何に対しての」の部分が間違っています。
イ
「世にどのように評価されるのかを気にして自分の考え・感性を突き詰めていなかったことに対する」
「恥ずかしさ」
⇒「世にどのように評価されるのかを意識するあまり」の部分が、本文の「世間の風向きに合わせて書くものを変える」と合致します。
また、「考えや感性を突き詰めていくことが十分ではなかった」の部分が、本文の「譲れないものを見極めて、それを理解するまで待つ時間が必要だ(=まだ理解できていない=十分に見極められていない)」と合致します。
⇒〇
ウ
「鐘ヶ江が自分の映画監督としての将来を考えて深い配慮をしてくれていたことに対する」
「驚き」
⇒「何に対しての」の部分が違いますね。
エ
「鑑賞者の心に響くものを届けようとする気持ちが希薄だったことに対する」
「反省」
⇒「鑑賞者の心に」が×ですね。他人ではなく、自分が譲れないものを理解するという内容が正しいです。
問3
表現について問う設問です。
ここは、傍線部そのものやその前後数行ではなく、傍線部より28行後にある
「時計の針の音もない静寂」
がキーフレーズとなります。
ア
「静寂」⇒〇
解答根拠が傍線部より28行も後と離れているため、キーフレーズがそのまま選択肢に使われています。
イ
「緊張感」⇒これ自体は「唾を飲み込む」などの描写で表現されています。
しかし、「時計の音を想起させる」は「時計は置かれていない(⇒置かれていないなら音がしない)」と矛盾しますね。
ウ
「理想的な映画制作の場にいる」⇒こういった描写は本文中にありません。
また、選択肢全体がキーフレーズ「静寂」とまったく関係のない内容になっています。
エ
「現実的な問題を忘れて」の箇所が、「時代とともに(世の中の現実が)容赦なく変わっていく」といった内容と矛盾するという判断ができます。
しかし、ここでも「静寂」と関係のない内容であるから×という判断ができると良いです。
問4
この文章の主題である
ここでは、
変わらないもの:自分の心。自分の感性。
変わっていくもの:作品を取り巻く環境。映画の良し悪しを決める物差し。
が読み取れているかどうかを問う設問です。
ア
「信念をもつことが大切」⇒これは「変わらないもの」に対しての説明として正しいですね。
「~と~は関わりがない」⇒これは「変わっていく」という言葉とは意味が異なっています。よって×です。
イ
「一つの事にこだわるべきではない」⇒これが「自分の心が感じたことを譲らずそのまま実行する」鐘ヶ江の考えと異なりますね。×です。
ウ
「~は変わらざるをえない」⇒「変わっていくもの」に対する説明としてOKです。
「自分の心を見つめて譲れないものをつかむ」⇒「変わらないもの」としての心・感性に対する説明としてOKです。
これが正解となります。
エ
「尊敬する人物の言葉」⇔「自分の体験」
という対比構造のある選択肢です。
この対比構造は本文ラストに鐘ヶ江の言葉のなかで登場します。
傍線部(4)の時点で登場している対比構造ではありません。
よって×です。
問5
問1に続いて、比喩表現が表している内容を問う設問です。
「雨が上がったことを掌で確かめるときの人物の心情」をあなたが自分で勝手に想像して選択肢を選ぶことがないようにしてください。
解答根拠はあくまでも本文に書いてあることです。
そうすると、傍線部(5)前後を注意深く読むことになります。
そして、このことに気づきます。
「~かもしれない」
このフレーズが、傍線部(5)前後数行で3回も使われています。
これは、「50%ー50%であり、確証がもてない」といった意味ですね。
これが問5のキーポイントです。
ア
「理解した」⇒「~かもしれない」が表す不確かな感情と一致しません。
イ
「確証を得ることができた」⇒「~かもしれない」が表す不確かな感情と一致しません。
ウ
「~の決意を固めた」「寂しさを感じた」⇒「~かもしれない」が表す不確かな感情と一致しません。
エ
「確信はもてないものの」⇒「~かもしれない」が表す不確かな感情を表現しています。
問6
本文全体の内容を問う設問です。
ということで、やはりこの文章のテーマ・主題について意識して解きたいですね。
この解説でも再三触れているように、この文章のテーマ・主題は
変わらないもの:自分の心。感性。それを積み上げるために過ごしてきた時間=とても大事なもの
一番変わりやすいもの:質や価値を測る物差し(=映画の良し悪しを決める物差し。)
です。
これを踏まえたものを選ぶようにしましょう。
ア
「心の問題」⇒テーマと合致します。
「自身の心を見つめ確認する」⇒「~なんてこと、わかってるんだ。」「でも、仕方ないんだ。」といった箇所が自分にも言い聞かせているように読み取れる箇所です。
ただし、「これが合っている!」と選ぶのは難しいです。
この選択肢がテーマと合致していることを念頭に置いて、イ~エを消去法で消していくスタイルになると思います。
イ
「(鐘ヶ江は)確信を持つことができず」⇒鐘ヶ江は尚吾に「感性を大切にしなさい」「自分が積み上げてきた時間を信じなさい」といったアドバイスを断定するかたちで伝えています。よって、×です。
ウ
「鐘ヶ江は尚吾の過去の体験の価値を否定している」⇒「過ごした時間は、紛れもなく本当なんだ」と、そこに価値があることを伝えています。よって、×です。
エ
「自分と同じ愚かな失敗」=映画館での上映にこだわること
「繰り返さないでほしい」=尚吾には映画館での上映にこだわってほしくない
ということになります。
これは×ですね。
鐘ヶ江は尚吾に、「時間や感性を大切にしてほしい」と思っています。上映スタイルに関するアドバイス・励ましはしていません。
以上で、2022年2月に実施された日比谷高校入試の自校作成問題・国語の大問3の解説を終わります。
丁寧な解説を心掛けた結果、大変長いものになってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
あなたが都立高校入試を通して成長・成功することを祈っています。