この記事では、2021年2月に行われた日比谷高校一般入試の数学を解説します。
日比谷高校の一般入試では、数学や国語、英語は自校作成問題での試験が行われます。
自校作成問題は、その学校を受験する生徒のレベルに合わせた難易度となります。
したがって、日比谷高校の自校作成問題は都立の共通問題や他校の自校作成問題と比べて難しい問題であることが多いです。
この記事は、日比谷高校の自校作成問題を対策するにあたって
「どのような手順・思考回路で解いていけばいいのか」
「記述問題を書くとき、どのようなことに気をつければいいのか」
といったことを知りたい人向けに書きました。
ですので、この記事を読んでもらえれば上記のことを過去問解説を通して理解していただけます。
その際、
事前に自力で問題を解いてからこの解説記事を読む
ことを強くオススメします。
では、解説を始めます。
大問1
日比谷高校の自校作成問題・数学は大問1が小問集合になっています。
問5の作図は、年によってはアプローチを思いつきにくい問題になっていますがそれ以外の問題は必ず正解したい問題です。
問1
平方根の計算です。
・「√54」を「3√6」にしてから計算する
に気をつけて手順通り計算してください。
問2
二次方程式です。
展開して左辺に整理して解の公式を使って解を出す問題です。
注意点は「因数分解にこだわってタイムロスをしないように!」くらいです。
問3
傾きが負の1次関数なので、xの値が大きくなればなるほどyの値は小さくなります。
ということは、
・x=-2のときy=8・・・①
・x=5のときy=q・・・②
です。
①を与えられている1次関数の式に代入してpを出します。
そして、求めた1次関数の式に②を代入してqを出します。
問4
袋Aには1~5のカードが、袋Bには1~6のカードが入っています。
サイコロなら値が1~6で確定ですが、袋であれば入れるカードを変えて受験生を惑わすことができます。
今回は、袋Aを1~5にして少し惑わせようとしています。
(どうせなら3~8とかにすれば難しくなるのに、と思いました。)
ともあれ、この問題の仕組みはサイコロ問題と変わりませんのでマス目をつくって条件を満たすマスの数を数えましょう。
縦にa、横に3bをとって、最大公約数を調べます。
最大公約数が1であれば◯を、最大公約数が1以外であれば×を書き込みます。
3 | 6 | 9 | 12 | 15 | 18 | |
1 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
2 | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | × |
3 | × | × | × | × | × | × |
4 | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | × |
5 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ |
・マス目の数は30
・◯の数は17
ということで、求める確率は
17/30
です。
約分ができない値が出てくると不安になる人もいるかもしれませんが、気にしないでください。
問5
点Pはすでに与えられている
⇒∠APBの大きさは判明している
⇒∠APBと同じ大きさの角をどこかにつくり、それと同じ大きさの角を∠CPQとすれば良い
⇒仮にQの場所を決め、そこから半直線QPを伸ばしてみる(後で消すので、薄く書くこと)
⇒∠CPQの対頂角が出現する
⇒対頂角の大きさは等しいので、∠CPQの対頂角の大きさを∠APBと同じ大きさにすれば良いと分かる
(⇒半直線QPを消す)
⇒PA=PDとなる二等辺三角形を作図し、ADとBPの交点をEとする
⇒∠PAE=∠PDEなので、半直線DPと直線ACの交点が求める点Qとなる
という手順で考えれば答えにたどり着くことができます。
大問2
日比谷高校の自校作成問題・数学の大問2は関数です。
関数の性質と図形の性質の両方を用いて計算することを意識してください。
問1
DE//BCであり、三角形ADEと三角形ABCはともに直角三角形
⇒三角形ADEと三角形ABCは相似である(問題文から、相似比は1:5であるとわかる)
⇒点Aのx座標が-2なのでAEの長さは2
⇒相似比が1:5なので、ACの長さは10
⇒ECの長さがCのx座標と等しいので、ECの長さを出す
⇒CE=ACーAE=10ー2=8
⇒Cのx座標は8
⇒Bのx座標も8
⇒Bはy=x2上の点なので、Bのy座標は8×8=64
⇒よって、B(8,64)である。
問2
記述問題なので、解答の方針や途中の計算・考え方を丁寧に書いていくことで途中で分からなくなったり計算ミスをしてしまったりしても1点でも多く点をもらえるようにしていきましょう。
求めるのは直線l(エル)の式
⇒傾きは2であることが与えられている
⇒y切片の座標を求めればいい=点Dの座標を求めればいい
⇒また、直線l(エル)の式をy=2x+Lとおいて点Aか点Bの座標を代入することで出すこともできる
⇒点A、点B、点Dいずれかの座標を求めればいい
⇒そのための方法を考える。
直線l(エル)の傾きが2
⇒AE:AD=1:2、AC:CB=1:2
⇒この問題では三角形ABCの面積が与えられている
⇒AC:CB=1:2を利用して考えることにする
⇒ACをtとおくと、CBは2tとおける
⇒2t2×0.5=25
⇒2t2=50
⇒t2=25
⇒t=±5
⇒点Bのx座標は正の数なので、t=5
⇒ACの長さは5、CBの長さは10である(いずれも、点Bのx座標やy座標とは異なる)
⇒AEやEOの長さがわかれば先に進むことができる(ACーAE=C、そしてBのx座標。BC+EO=Bのy座標。)
⇒点Aがy=x2上の点であることに注目して、点A(a、a2)とおく
⇒すると、B(a+5、a2+10)となる
⇒また、点Bもy=x2上の点であるので、点Bは(a+5、(a+5)2 )と表すこともできる
⇒(a+5)2=a2+10 である
⇒これを解くと、a=-3/2である
⇒A(-3/2,9/4)である(点Bの座標を求めてもよい)
⇒直線l(エル)の式をy=2x+Lとおき、そこにA(-3/2,9/4)を代入する
⇒L=21/4となる
⇒直線l(エル)の式はy=2x+21/4 である
この問題の最重要ポイントは、初手の
直線l(エル)の傾きが2⇒AE:AD=1:2、AC:CB=1:2
です。
この関係が成り立つことを暗記し、使えるようにしておく必要があります。
問3
線分ACの中点をFとおく
⇒AE=EF、AF=FCである
⇒点Aの座標を(ーm,m2)とおくとAE=EF=m、AF=FC=2mである
⇒また、AC=AE+EF+FC=4m=BCである
⇒また、EC=EF+FC=3mより、点Cと点Bのx座標は3mである
⇒点Bはy=x2上の点であるので、点Bは(3m、9m2 )と表すことができる
⇒点Cはx座標が点Bと同じであり、y座標は点Aと同じであるので(3m,m2)と表すことができる
⇒(BCの長さ)=(Bのy座標)ー(Cのy座標)=9m2ーm2=8m2
⇒AC=BCなので、4m=8m2
⇒m=0、1/2
⇒m>0より、m=1/2
⇒点Aの座標は(ー1/2,1/4)である。
この問題の最大のポイントは、
(中学範囲での)二次関数のグラフはy軸に関して対称である(⇒「AE=EF」となる)
これを知っていて、かつ思いつけるかだと思います。
大問3
日比谷高校の自校作成問題・数学の大問3は平面図形です。
2021年度まで、4年連続円が出題されています。
円周角の定理を利用することを意識してアプローチしましょう。
問1
円と角度の問題なので、
・円周角の定理
・円周角と中心角の関係
などを使うのではないかと予想して進めていきましょう。
あとは、与えられている2つの角の大きさを利用して、角の大きさを求められるところから求めていけばたどり着くことができます。
OA=OC(円の半径)
⇒三角形OACは二等辺三角形
⇒∠OAC=∠OCA=72°
⇒∠AOC=180ー72ー72=36°
⇒ABは円の直径なので、∠COB=180°ー36°=144°
CDが円の直径であり、Eが円周上にあるので、直径の円周角は90°なので∠CED=90°
∠BFE=113°なので、∠OFE=180ー113=67°
以上より、四角形の内角の和は360°なので、四角形CEFOにおいて
∠OCE=360ー144ー90ー67=59°
∠OCE=∠DCEなので、∠DCE=59°
問2(1)
2つの三角形が合同であることを証明する
⇒対応する辺の長さが等しいことor対応する角度の大きさが等しいことを示す
⇒いずれかの辺の長さまたは角度の大きさを示した後、どの合同条件を満たせばよいのかを考えて方針を決める
問1に続いて円と角度の問題なので、
・円周角の定理
・円周角と中心角の関係
を使うと予想する。
中心角は円周角の2倍になるので、
∠AOC=2∠ADOである。
すなわち、∠ADO=1/2∠AOCである。
また、弧CE=2弧ACなので、∠CDE=2∠ADO=2×1/2∠AOC=∠AOCである。
よって、∠GOJ=∠HDKである。・・・①
また、AG=OHであり、円の直径は等しいのでOA=ODであることから
OAーGA=OGとODーOH=HDは等しいといえる。
これより、OG=DHである。・・・②
(残る1つが厄介だが、1組の辺と1組の角の大きさが等しいことを示すことができたので、この後の方針は次のいずれかとなる。用いる合同条件を2組の辺の長さとその間の角の大きさが等しいことだと考える⇒JO=KDを示す
用いる合同条件を1組の辺の長さとその両端の角の大きさが等しいことだと考える⇒∠JGO=∠KHDを示す
円の問題⇒円周角の定理を使って2つの角の大きさが等しいと示しやすい⇒∠JGO=∠KHDを示す方針で進めることにする)
対頂角は等しいので、∠KHD=∠OHIである。・・・③
ここで、三角形OGJの内角の和は180°なので、∠GJO=∠IJO=a°とすると∠JGO=180ーaー∠GOJ=180ーaー∠AOC・・・④
また、三角形IJHの内角の和は180°なので∠OHI=180ーaー∠HIJ=180ーaー∠HIG・・・⑤
④⑤と∠HIG=∠AOCにより、∠JGO=∠OHI
これと③より、∠JGO=∠KHDである・・・⑥
①②⑥より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので、三角形OGJ≡三角形DHKである。
問2(2)
OH:DH =2:5
DH:DK= 3:2なので、
OH:DH:DK=6:15:10と表すことができる。
OH+DHは円Oの半径であり、これが6+15=21である。
OCも21なので、CJ=21ーOJである。
ここで、合同な三角形の対応する辺の長さは同じなので、DKが10ならばOJも10である。
よって、CJ=21ー10=11である。
以上より、CJ:OH=11:6である。
2組の辺の長さの比を、どちらにもDHが含まれていることに注目して3つの辺の長さの比に変換するところがポイントですね。
大問4
日比谷高校の自校作成問題・数学の大問4は立体図形の問題です。
立体図形の問題は苦手とする受験生が多いですが、立体から平面を切り取って抜き出すことに慣れればそんなに難しくありません。
過去問演習等を通じて慣れていきましょう。
問1
三角形AJLの面積を求める問題です。
三角形の面積は底辺×高さ÷2で求めますので、三角形AJLの底辺と高さがどこになるのかを決める必要があります。
三角形AJLでは、
・底辺:AJ
・高さ:LK
です。
・AJとLKが垂直であるといえる理由
AKを含む面である面AEHDとLKを含む面である面CGHDは垂直である
⇒よって、AJとLKは垂直であるといえる
・AJの長さ
AE=AB=EF=10㎝・・・①
EJ=FI(長方形の対辺の長さは等しい)・・・②
∠AEJ=∠EFI=90°・・・③
①②③より、2組の辺とそのあいだの角の大きさが等しいので三角形EFI≡三角形AEJ
⇒合同な三角形の対応する辺の長さは等しいので、AJ=EI=16㎝
・LKの長さ
CL=DKなので、四角形CLKDは長方形である
⇒長方形の対辺の長さは等しいので、LK=CDである。
⇒また、四角形ABCDも長方形であり、長方形の対辺の長さは同じなのでCD=BAである
⇒よって、BA=CD=LK=10である。
以上から、三角形AJLの面積は、
16×10÷2=80㎠である。
問2
MJとCDの交点をN、FJとGHの交点をOとおく。
⇒長方形の対辺は平行なので、MF//NO
⇒平行な2直線の同位角は等しいので、∠JMF=∠JNO。また、∠JFM=∠JON。
⇒よって、2つの角の大きさが等しいので三角形JMF∽三角形JNOである
この2つの三角形の相似比を求めることができれば、AE//BF//CG//NOであることからAE=BF=CG=NO=10であることを利用してFMの長さを求めることができる。
ここで、三角形JHOと三角形JEFにおいて、
長方形の対辺は平行なので、HO//EF
⇒平行な2直線の同位角は等しいので、∠JHO=∠JEF。また、∠JNH=∠JFE。
⇒よって、2つの角の大きさが等しいので三角形JHO∽三角形JEFである
⇒JH:JEを求めることで、この2つの三角形の相似比を求める
⇒長方形の対辺の長さは等しいので、JH=GI=15
⇒JE=JH+HE=GI+EH=15+5=20
⇒よって、三角形JHOと三角形JEFの相似比は15:20=3:4である
⇒相似な三角形の対応する辺の長さの比は等しいので、JO:JF=3:4である
⇒よって、三角形JNOと三角形JMFの相似比も3:4である
⇒MF=10×4/3=40/3である。
問3
立体PーACGEの体積を求める
⇒立体(四角すい)の体積は底面積×高さ×1/3である
⇒この立体においては、
底面積:四角形AEGC
高さ:GPである
(CG⊥FGより、CG⊥FI。また、GIとGPは同一平面である四角形HGIJ上にあるのでCG⊥GPである。)
・底面積(四角形AEGCの面積)を求める
⇒∠EGF=60°であり、∠EFG=90°なので、三角形EFGにおいて、EG=2FG=2×BC=2×5=10㎝である
⇒AEの長さは10㎝である
⇒底面積は、10×10=100㎠
・高さGPを求める
∠GPI=60°であり、∠PIG=90°なので三角形PIGにおいて、GP=IP×2=5×2=10㎝である
よって、求める体積は
100×10×1/3=1000/3㎤
である。
以上で、日比谷高校の自校作成問題・数学・2021年度入試(令和3年度入試)の解説を終わります。
間違えた問題は自力で解けるようになるまで繰り返し演習すると力がつきやすいです。
是非頑張ってください。