都立日比谷高校 推薦小論文 2015年度入試(平成27年度入試)解説

このページでは、2015年1月に実施された都立日比谷高校推薦入試の小論文を解説します。

なお、事前に星進会の「教科別日比谷高校合格メソッド・小論文を読んで頂くと、以下の解説がスムーズに読み進められると思います。

こちらのページです。↓

また、ここで解説している問題は、日比谷高校のホームページで手に入れることができます。
http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/SelectedEntrants/TestTheme.html
まだお持ちでない方は、このURLから入手し、一度自分の力で解いてみてから解説を読むことをオススメします。

小論文の解説では、知識・発想・文章について日比谷高校受験生のレベルに合わせることを意識しました。
つまり、この解説を読んだ日比谷高校受験生に「こんなこと知らないよ」「こんな発想できないよ」「こんな文章書けないよ」とは思わせないような内容にしたということです。
そうするとことで、この解説を読んだ皆さんが日比谷高校の推薦入試を受験する当日に実践できる「知識の活用法」「発想法」「文章作成法」を身につけられるはずです。


では、解説を始めます。

この年、日比谷高校が選んだテーマは「観光立国」でした。
この試験が実施された2015年というのは、2020年に開催予定だった東京オリンピックに向けて「観光を盛り上げよう」という雰囲気が高まっていました。
おそらく、
2013年9月に2020東京オリンピックの開催が決まる
⇒「お・も・て・な・し」が流行語になる
⇒観光への注目が高まる
⇒9月には既に2014年に実施する推薦入試の小論文問題は作成済み
⇒次年度である2015年実施の推薦入試のテーマに観光を選ぶ
という流れではないでしょうか。

日比谷高校の小論文では、
「中学で習ったことと関連させる」が最重要ポイントです。
しかし、この年の問題では例えば社会の教科書から関連ポイントを探すことは難しかったです。
当時の中学校では
「2020年に外国人観光客をおもてなしするために英語を勉強しておこう!」
「2020年にオリンピックのボランティアをしよう!そのためにできることってなんだろう?」
といったことを考えさせる取組が盛んだったと記憶しています。
「そういった活動に熱心に参加していて、その背景まできちんと理解していたらこのテーマに関して自分の意見を持っているでしょ?」
という当時の日比谷高校からのメッセージを感じます。

この解説を書いている2022年1月現在、日本は観光立国を推進するような状況にありません。
しかし、近い将来、また必ず観光立国を推進できる時期が来ると思います。
そのときまた、このテーマでの出題があるのではないでしょうか。

問1

小論文を解くときは、まず設問が何を求めているのかをきちんと確認しましょう。
今回の問1では、
・資料1からわかることを説明する
・その際、資料1の具体的な文言に触れる
・図1からわかることを説明する
・図2からわかることを説明する
・180字~200字で書く
という条件になっています。
これについて一つ一つ考えていきます。

資料1

観光立国推進基本法についての資料です。
リード文に「そこにある目的、基本理念の実現に向けた取組が推進されている」とあります。
観光立国推進基本法の目的、理念を資料1から読み取っていきましょう。

地域における創意工夫を生かした主体的な取組⇒活力に満ちた地域社会の持続可能な発展⇒国内外からの観光旅行を推進

各地域の特色・魅力を活かした観光の推進により地域を元気にしていこうという意図が読み取れます。
また、「国内外から」となっているところにも注目ですね。
外国人観光客をたくさん呼ぶだけでなく、国内の観光旅行を推進することも観光立国推進基本法の目的・理念であるようです。

観光で健康的でゆとりのある生活を実現⇒国民の観光旅行の促進

「国民の」とあるので、こちらは国内の観光旅行推進に絞って話されています。
観光旅行が活発になれば、健康的でゆとりのある生活が実現できるということですね。
確かに、行きたいところに旅行ができたら楽しいですね。
(ただ、観光旅行に出かけるには元気である必要があるし会社や部活、習い事などを休まなければいけない人も多いでしょう。
健康的でゆとりのある生活ができていないと国民の観光旅行を促進することは難しいですね。
両者の関係は「卵が先か、鶏が先か」と同じで議論になりそうですね。)

国際相互理解の増進⇒国際的視点に立つ

今度は「国際」とあるので外国人観光客に絞った話です。
観光は国際相互理解に役に立つということです。
日本に外国人観光客がたくさん来れば、私たちは外国人と接する機会が増えて外国人の価値観や行動様式などを知るきっかけが増えます。
また、外国人観光客が日本にたくさん来れば、たくさんの外国人に日本の価値観や行動様式などを知ってもらうことになります。
こうして観光により国際相互理解が進むというわけです。

多様な事業の分野における特色ある事業活動から構成され、多様な就業機会を提供する⇒我が国及び地域の経済社会において重要な役割を担っている⇒国、地方公共団体、住民、事業者等による相互の連携確保

・観光業には様々な業界の企業が関わります。
航空会社、鉄道会社、ホテル、旅館、飲食店、土産物屋、テーマパークなどなどです。
これらの仕事が増えればそこで雇われる人が増えて日本経済や地域経済がどんどん元気になるよ、という話です。

・そして、それを目指して国、地方公共団体、住民、事業者等で力を合わせていきましょう、ということを言っています。

これらの内容の一部分を180字~200字の作文に活用しなければなりません。
どの部分の具体的な文言を使うかは、図1や図2の内容とも関連させて選ぶことにしましょう。

図1

サミット(先進国首脳会議)に参加している国の外国人旅行者受入数が示されている棒グラフですね。
このグラフはかなり読み取りやすくなっています。

日本の外国人旅行者受入数がG8(サミットに参加する8か国)の各国のなかで最下位になっています。
(注:2014年以降ロシアのサミットへの参加が停止されていて、2022年1月現在はこの表にある国々からロシアをぬいて「G7」と呼ぶことが一般的です。)

内容としては、「日本はG8のなかで外国人旅行者受入数が少ない」が読み取ることができればOKです。

先ほど書いたとおり、この年の問題では日比谷高校が毎年求めてくる
「中学で習ったことと関連させる」が難しいので
「このグラフに書かれている国のラインナップは先進国首脳会議の参加国だ!」と社会科で習った知識を活かして気づいたことは答案のなかでアピールしておきたいです。

図2

G8の国際観光収入・支出を比較した棒グラフです。

・日本は「国際観光収入<国際観光支出」となっている
・日本の国際観光支出は8か国中7位と低い。

この2つを読み取ることができればOKでしょう。

図1+図2

資料や図が複数与えられたときは、それぞれを読み取るだけでなくいくつかを組み合わせて得られる情報にも注目するようにしましょう。
今回は、図1と図2の組み合わせです。
組み合わせて得られる情報は何かないでしょうか?

・外国人旅行者数
・国際観光収入
の組み合わせなので、
「外国人旅行者1人あたりの国際観光収入」に注目することに気づけるとよいです。
「1人あたりの〇〇」は、小学校5年生の算数で習う「単位量あたりの大きさ」です。
これは日比谷高校推薦入試の小論文で3~4年に1度くらいのペースで活用する知識なので必ず覚えておいてください。

図1より、日本の外国人旅行者受入数はカナダの半分、フランスの10分の1です。
図2より、日本の国際観光収入はカナダの約8割、フランスの10分の3です。
つまり、日本の外国人旅行者1人あたりの国際観光収入はカナダの1.6倍、フランスの3倍となっています。

外国人旅行者をたくさん呼ぶことができれば、一気に国際観光収入を増やすことができそうです。

資料1のどの具体的な文言に触れるのか

図1:日本は外国人旅行者受入数が少ない
図2:日本は国際観光収入が少なく、国際観光収入<国際観光支出という状況である
図1+図2:日本は外国人旅行者1人あたりの国際観光収入は多い

⇒①これらと関連している内容②これらが全く言及できていない内容を選んでおきたいです。
①:「国際的視点に立って」(視野を世界に広げて外国人旅行者をたくさん呼ぼう、ということですね)
②:「国民の観光旅行の促進」(外国人旅行者数を増やすだけでなく国内旅行も盛んにしよう、ということです。)
⇒これらの両方をワンフレーズで表現できるのが「国内外からの観光旅行を促進する」です。
これを使うことにしましょう。

また、②として「外国人旅行者数と国際観光収入を増やした先に何があるのか」
⇒「多様な就業の機会を提供すること等」によって日本の経済を活性化することができる(経済成長が実現できる)。ということが書けると良いですね。

これらの情報を参考にして、書いてみましょう。

資料1に「国内外からの観光旅行を促進する」とある通り、我が国では国内観光旅行と外国人旅行者数受入数を増やす取組を推進している。「多様な就業の機会を提供すること等」によって日本経済を活性化する事が狙いだ。しかし、図1によると日本の外国人旅行者受入数はG8のなかで最下位で、図2によると国際観光収入は7位である。また、国際観光収入は国際観光支出より少ない。しかしながら、図1と図2から外国人旅行者一人あたりの国際観光収入はフランスの3倍であり、今後の国際観光収入の増加が期待できる。(239字)

字数オーバーなので、削ります。

180字~200字で書く 

なるべく内容は削らずに全体の文字数を減らしていきます。

資料1に「国内外からの観光旅行を促進する」とある通り、我が国では国内観光旅行と海外国人旅行者数受入数の観光客を増やす取組を推進している。「多様な就業の機会を提供すること等」等によるって日本経済の活性化する事が狙いだ。しかし、図1によるとから日本の外国人旅行者受入数はG8中のなかで最下位で、図2によるとから国際観光収入は7位だである。また、国際観光収入は国際観光・支出は赤字だより少ないしかしながら、図1と図2から外国人旅行者一人あたりの国際観光収入はフランスの3倍であり、今後の国際観光収入の増加が期待できる。

取り消し線の部分を削除して読みやすくすると、

資料1に「国内外からの観光旅行を促進する」とある通り、我が国では国内と海外の観光客を増やす取組を推進している。「多様な就業の機会を提供」等による日本経済の活性化が狙いだ。しかし、図1から日本の外国人旅行者受入数はG8中最下位で、図2から国際観光収入は7位だ。また、国際観光収入・支出は赤字だ。図1と図2から外国人旅行者一人あたりの国際観光収入はフランスの3倍であり、国際観光収入の増加が期待できる。 (199字)

となります。
今回はこれを解答例とします。

感想
それぞれの資料は読み取りやすいものだったので、「図1・2で与えられた国のラインナップの意味」と「図1・図2を組み合わせることで見えてくる日本の観光産業のポテンシャルの高さ」が指摘できると他の生徒の小論文と差がつけられるのではないでしょうか。

問2

こちらの設問でも、設問条件を読み取っておきます。
・図3を根拠にして書く
・図4を根拠にして書く
・アピールしたい東京の魅力を書く
・具体的に推進したい取組を書く
・360字~400字で書く

今回はこれらの条件を満たす小論文を書きましょう。
1つずつ考えていきます。

図3

問1で「日本はこれから観光客数を増やす必要がある」という内容を書きましたので、それを踏まえながら図3を確認しましょう。
「東京都を訪れた旅行者の数は、国内・海外ともにここ数年はほぼ横ばいで増加していない」ということを読み取ります。

図4

上位の項目をうまく関連付けて整理します。
外国人旅行者を受け入れるにあたって、都民は
・「言語対応」が不足していると考えている。
どの場所での言語対応かというと…
・観光案内所
・観光案内標識
である。
また、どういったタイミングでの言語対応が不足しているかというと
・緊急・災害時における言語対応
だと考えられる。

外国人旅行者ではなく、あくまで受け入れる側の都民の意見ですがこの問題ではこれを基に組み立てます。

アピールしたい東京の魅力

東京のどのような魅力を国内、そして国外にアピールするか考えましょう。
とても自由度が高いです。
東京の具体的な強み・長所が活かせていれば、内容による減点はないでしょう。

しかし、何らかの指針は欲しいですよね。
そのときに役に立つのが、日比谷高校の推薦入試小論文の鉄則「中学で習ったことと関連させる」です。

地理(関東地方)

・テーマパークなどの施設に各地から多くの観光客が訪れている
・人口が多く交通の便が良いため、多種多様な場所や施設が整備されている
・成田空港や羽田空港があり、世界への窓口・日本の交通の中心としての役割を果たしている
といった特徴が書かれています。
これをヒントに考えていけると良いですね。

すると、
・外国人旅行者向け:日本には様々な伝統文化がある⇒伝統文化を体験できるテーマパークや施設。
多くの外国人旅行者はまず成田空港に到着するので、そこからの近さも魅力となる。
・国内旅行者と一部の外国人旅行者向け:マンガ・アニメが人気⇒マンガ・アニメの世界観を体験できるテーマパークや施設
といった魅力が浮かび上がります。

東京が推進する具体的な取組

以上を踏まえ、具体的な取組を考えます。
・図3:国内・海外の観光客数が横ばい⇒どちらも増やしたい
・図4:様々な場所・タイミングでの言語対応を強化したい
・東京の魅力
①伝統文化、そして新しい文化のテーマパーク・施設
⇒さらに充実させる+施設内の言語対応を強化して外国人旅行者に楽しんでもらう
②成田空港・羽田空港・鉄道などによる交通の利便性の高さ
⇒さらに利便性を向上させるとともに、空港から各地へ向かう際の言語対応を強化し、観光案内を充実させる

といったことが考えられます。

以上を踏まえて書いてみましょう。

私がアピールしたい東京の魅力は、以下の2つである。まず、テーマパークや施設が充実していることだ。そして、成田空港、羽田空港、鉄道による交通の利便性の高さだ。図3から、東京を訪れた旅行者の数は、国内・海外ともにここ数年横ばいであり観光立国推進のためにこれを伸ばしていく必要があることがわかる。また、図4から、外国人旅行者の受入にあたって観光案内や緊急時を中心として言語対応に課題があることがわかる。以上から、私は外国人旅行者が日本の伝統文化を体験することができるテーマパークや施設をさらに充実させ、さらにそこでの言語対応を強化していく取組を推進すべきと考える。また、外国人旅行者や国内の若者のうち、マンガ・アニメ好きをターゲットにした施設も充実させたい。そして、成田空港などから各観光地に向かう際の利便性をさらに向上させ、道中の言語対応や観光案内を強化する取組を推進すべきと考える。 (391字)

360字~400字で書く

制限字数内におさめます。
字数を気にせず書いてみたところ、ほぼ制限字数いっぱいになりました。
今回は、これを解答例にします。

感想
図4には極端に数値が大きい項目があって読み取りがしやすく、「アピールしたい東京の魅力」というテーマも日比谷高校の小論文にしてはかなり自由度が高いので書きやすかったのではないかと思います。
こういうときこそ、「中学で習ったことと関連させる」の原則を強く意識したいですね。

今回は以上です!

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