この記事では、2024年2月に行われた日比谷高校一般入試の国語大問4(説明文、評論文)を解説します。
日比谷高校の一般入試では、国語や数学、英語は自校作成問題での試験が行われます。
自校作成問題はその学校を受験しにくる生徒のレベルに合わせた難易度となります。
したがって、日比谷高校の自校作成問題は都立の共通問題や他校の自校作成問題と比べても難しい問題であることが多いです。
この記事は、日比谷高校の自校作成問題を対策するにあたって
「本文をどのように読み進めていけばいいのか」
「どのような手順で選択肢を選んでいけばいいのか」
「記述問題を書くとき、どのような思考回路で書く内容を決めればいいのか」
といったことを知りたい人向けに書きました。
ですので、この記事を読んでもらえれば上記のことを過去問解説を通して理解していただけます。
その際、
事前に自力で問題を解いてからこの解説記事を読む
ことを強くオススメします。
ここで解説している国語の問題・答案用紙・解答は日比谷高校のホームページから入手することができます。
なお、事前に星進会の「教科別日比谷高校合格メソッド・国語」を読んでいただくと以下の解説への理解度が高まると思います。
では、解説を始めます。
本文解説
第1段落
両輪
両輪とは、
・大切なものが2つある
・その2つは密接に関連している
ことを示す語句です。
ここでは、「合理性」「客観性」がともにこの文章のキーワードであると判断できます。
問いかけ
「~なのだろうか」といった問いかけはそれ以降の文章のテーマを示します。
ここでは、「合理性と客観性の関係」がテーマであると示されています。
第2段落
ねばならない
これは筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、
・一定のルールに従ったゲームとして行われねばならない
・自他の間でルールが共有されていなければならない
・共有された外的基準に従わせねばならない
の3つがこれに該当します。
とは
キーワードの定義や意味を説明する際に使われます。
ここでは「自らの判断の正当化」を説明しています。
対義語
対義語が登場した場合、対比構造に基づいて筆者が言いたいことを主張しているケースがほとんどです。
ここでは、「自ら」と「外部の他者」が対義語です。
逆説
逆説とは、「真逆のことを言っているように聞こえるが、実は正しいこと」を指します。
ここでは、
・「自分」の判断の正当化
・正当性の根源は「他者」(と共有した外的基準)
という「自分」⇔「他者」の対比構造を指して逆説としています。
第3段落
引用
筆者が、自分よりも著名な(場合によっては同格の)人物の名と主張を借りて自分の主張の正当性を示す表現技法です。
ここでは、ポーターの主張が引用されています。
客観性⇒数字・数値
客観的なものの代表例としてよく挙げられるのが数字です。
これは知識として覚えておきましょう。
つまり
つまりの直後は要点がきます。
ここでは、
・客観化=合理的正当化のための基準の共有をより広範囲に行うこと
・判断から個人の主観をどんどん排除すること
というのが要点です。
この要点を理解する際、「客観」⇔「主観」の対義語のペアを意識する必要があります。
第4段落
言い換え
説明文において、大事なことは言い換えられて繰り返し述べられます。
ここでは、
「作者の意図を極力排した」
「機械的客観性による科学者自身の自己否定プロセス」
が第3段落「没個人化」の言い換えになっています。
個人の「主観」がどんどん不要になってきているということですね。
第5段落
つまり
今回は
「理性+前提知識=同一の結論」という関係性が示されています。
とは
ここでは、
「合理性=全員が従う判断基準」
とされています。
理性、合理性に基づけば普遍的な判断ができるということですね。
第6段落
民主的平等=公平性
という意味が追加されました。
これ以外は、「理性」「客観性」といったこれまでの話が繰り返されています。
第7段落
深層学習/深層モデル/AI
入試当日までに「またAIの話か…」とウンザリできる程度にはAIへの言及のある説明文での演習をしておきましょう。
ほとんどの場合、AIの欠点や限界が述べられています。
言い換え
「個々人の特徴は埋没している」が「没個人化」の言い換えであることに注意したいです。
「没」の字が共通していることがヒントになります。
もちろん+しかし+主張
これは読解における1つの公式として暗記してください。
ここでは、
「AIは完全に客観的な存在だ」
ということが主張されています。
第8段落
「客観性」⇔「主体性」
というこれまでにもあった対比構造に基づいて話が進んでいます。
AIは完全に客観的⇒科学者らの主体性を完全に排除する(没個人化する、埋没させる、疎外する)ということです。
第9段落
~ように思える
筆者の主張があることを示す文末ですね。
ここでは、
深層モデル(AI)の欠点
①人間による合理的な理解や正当化を阻む
②民主的平等性を脅かす
という主張がなされています。
「まず~。次に~。」という表現に注目するとわかりやすいです。
第10段落
たしかに+むしろ+主張
これの読解の公式の1つです。
ここにあるのは
「近代の客観性は民主的な契機であった」という主張です。
しかし
逆接の接続詞です。
対比構造を示します。
ここでは、
「近代の客観性は民主的な契機であった」⇔「AIがもたらす客観性は理解不能であり不正・不平等を隠蔽して弱者を抑圧する」
という対比です。
反語
疑問と同じ表現でありながら、その答えが文章中で述べられていないものを反語といいます。
反語には筆者の主張が込められています。
ここでは、「~だろうか」のかたちで
「AIによりもたらせる客観性は誰にとっての・何のための客観性なのかがわからない」=「AIによる客観性では誰も得しないし何のためにもならない」という主張がなされています。
第11段落
つまり
今回は
「AIが民主的で客観的な合理性という概念に動揺・変化をもたらす」
というこれまでになされた主張が繰り返されています。
第12段落
もちろん+むしろ+主張
これも読解の公式の1つです。
ここでは、
「AIにより合理化が進むが、それは人間には理解不能なものである」
という主張がなされています。
第9段落で提示されたAIの欠点が踏まえられていますね。
啓示/中世
啓示とは神からのメッセージです。
「中世」⇔「近代」
「宗教」「神」⇔「科学」「理性」
という対比構造は説明文で頻出の対比です。
必ず覚えてください。
中世は宗教の時代、近代は科学の時代です。
設問
問1
本文解説で述べた通り、逆説とは、「真逆のことを言っているように聞こえるが、実は正しいこと」を指します。
ここでは、
・「自分」の判断の正当化
・正当性の根源は「他者」(と共有した外的基準)
という「自分」⇔「他者」の対比構造を指して逆説としています。
これについて述べている選択肢を選べばOKです。
ア:「全く相容れない」⇒×(他者との共有・合意がある)
イ:「自身のルールによって」⇒×(他者と共有したルールです)
ウ:◯
エ:「ルールを守ることに固執」⇒×(書いてない話です)
問2
本文を理解していれば「主観」をいれればよいことがすぐわかります。
しかし、「主観」は2字です。
設問要求は3字です。
したがって、「排除する」の反復や言い換えを探すことで空欄に入る3字の表現を見つけることになります。
「排除する」=「取り除く」なので、「固有性」が答えであることがわかります。
問3
「AIの問題点、つまりAIによる人間の主観の完全な排除」
についての理解を問う問題です。
ア:「人間に委譲する」⇒×(排除の真逆です)
イ:「人間がなすべき客観的な判断」⇒×(排除されるのは人間の「主観」です)
ウ:「特権階級の判断基準を抽4出」⇒×(無関係です)
エ:◯
問4
AIの欠点の1つである「AIによる差別構造の固定化が民主的平等性を脅かす」
についての理解を問う問題です。
ア:「一部の個人や団体の考えのみを反映」⇒×(AIは完全に客観的な存在です)
イ:「数的に有利な人々の意見を」⇒×(AIは完全に客観的な存在です)
ウ:◯
エ:「理解の届かないもの」⇒×(AIのもつ、もう1つの欠点に関する言及です)
問5
問4で言及したものとは別のAIの欠点
「人間による合理的な理解や正当化を阻む」
に関する理解を問う問題です。
ア:「科学の基本原理を解明する」⇒×(理解は阻まれます)
イ:◯
ウ:「社会的課題を解決することに寄与しない」⇒×(上記の欠点と無関係です)
エ:「理論から実用へ」⇒×(上記の欠点と無関係です)
問6
本文ではAIの欠点が述べられていますが、「AIの活用の可能性」について書けとのことなのでAIについて前向きなことを書く必要があります。
AIがどの分野でどのように活用されているかまたは活用が期待されているかの知識がないと書くことができないようになっています。
受験勉強だけでなく時事問題についての知識がないと日比谷高校の入試は突破できないということを覚えておきましょう。
文章構造が具体的に指定されていますので、その指定を必ず守りましょう。
・第1段落:具体的な領域におけるAIの活用の可能性
・第2段落:それに対するあなたの考え(「可能性」なので前向きな意見を書く)
以上の文章構造を満たし、原稿用紙の使い方や誤字脱字、文法ミスに注意すれば高得点の250字作文が完成します。
今回の解説は以上です。
本文とこの記事を何度か往復して熟読して日比谷高校の受験対策にお役立てください。
その他の大問の解説はこちらです。
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